2014 Harvard Medical School Clerkships at Massachusetts General Hospital

M3 female

私は201423日から328日までの2カ月間、Harvard Medical School (以下HMS)Elective Clerkship Programに参加させていただき、HMSの関連病院であるMassachusetts General Hospitalにて実習を行いました。2月はBorn Marrow Transplant/Leukemia Unit3月はCardiac Anesthesiaにて実習させていただきました。

 

1.       留学までの道のり

まずはHMS留学に至った経緯と準備について述べさせていただきたいと思います。

私はM0の頃に国際交流室のホームページをたまたま見つけてM3で海外臨床実習をする機会があるということを知り、「海外で実習できるなんてかっこいい!」と憧れ程度に考えていました。実際に面接の時期が近づいてからは他の大学や病院についても検討しましたが、学生時代にHMSでの臨床実習を経験された先生方にお話を伺い、留学を勧めていただいたこと、見学ではなく参加型の実習であること、1人暮らしは初めてだったので、できるだけ治安の良い都市で実習したかったということなどから、最終的にHMSのプログラム、に応募することに決めました。

準備ですが、HMSは協定校ではないので、研究室などの紹介がない限り、個人で応募する形になります。個人での応募手続きは大変なのだろうと思ってはいましたが、実際やってみると想像以上に煩雑であり、大変でした。まずは、国際交流室の学内選考面接を受けることになります。後述する書類にDean’s Letter (学部長推薦状)が必要なので、協定校でなくても面接は受けなければなりません。面接に合格した後は、いよいよHMSへの応募です。応募方法は毎年多少の変更があるそうですが、今年は @オンライン登録 A電話面接 B郵送にて書類提出 という流れでした。@では希望のコースを第15希望まで登録します。面白そうなコースがたくさんあって目移りしてしまいますが、私は内科系と外科系を両方回りたかったので、双方を満遍なく選択しました。かつてはHMSの学生専用のコースに受け入れてもらえることもあったと聞いていたので希望に入れようとしていたところ、今年はシラバス上で外国人の受け入れ可としているコースしか選択できなくなっており、少し慌てたので応募する方は気をつけてください。Aですが、過去には臨床的な知識を問う問題や自分の大学で受け持った患者さんに関する質問などが出題され、かなり厳しいとの評判を伺っていました。昨年は傾向が変わって易化したものの、再度難化する可能性も考慮し、USMLEの教科書などを使って対策しました。結局、難しいことは聞かれませんでしたが、ここで一生懸命勉強したことは実習が始まってから役に立ったと思います。電話面接に合格すると、Bの書類を記入し、TOEFLスコアとともに郵送します。電話面接に合格しても受け入れ許可が下りないこともあるので、通知メールが来るまでは非常に緊張しましたが、無事に受け入れが決まったときは本当に嬉しかったです。

 

2.       HMSでの実習

2-1.        2月:Born Marrow Transplant/Leukemia Unit

 HMSには付属病院がなく、実習は関連病院で行われますが、その中でもMassachusetts General Hospital (以下MGH)は、アメリカ病院ランキングでも常に1, 2を争っており、New England Journal of MedicineCase Recordsに症例を掲載していることでも知られる、アメリカで最も有名な病院の1つであるといえます。

 Born Marrow Transplant/Leukemia Unitは、Cancer Center1部門であり、骨髄移植と白血病の2つのチームからなっています。1日の流れとしては、まず1人で自分の受け持ち患者の回診を行い、次に上級医の先生との回診をした後、カンファレンス、他職種での回診となります。回診では、自分の担当患者さんの部屋に入る前に上級医の先生に簡単にプレゼンをすることになっていました。病棟のシステムが日本と全く異なるので最初は戸惑いましたが、次第に受け持ち患者の数も増やしていただき、カンファレンスでのプレゼンも任せていただけるようになりました。プレゼンでは、患者さんの病歴や所見の解釈だけでなく、鑑別診断やその日のプランの提案などまで自分で考えて発表させていただくことができ、大変やりがいを感じるとともに、勉強になりました。特に最後の2週間は部長の先生がBorn Marrow Transplantの病棟を担当されていたので、直接多くを学ぶことができ、非常に幸運だったと思います。”Your presentations and write-ups are excellent!”と言っていただけて誠に光栄でした。午後は外来見学で、初診外来では予診を取らせていただくこともありました。レクチャー等も充実しており、研修医・学生向けの腫瘍内科のレクチャーや昼食付きの教育カンファレンスが毎日あった他、血液標本のレクチャーや腫瘍内科の先生方による症例検討会、HMSの他の関連病院や他大学の先生による講演会なども多くあり、非常に勉強になりました。特に、New England Journal of Medicineに掲載予定の症例提示では、診断・治療方針の決定のプロセスや、その際の考え方の道筋がわかり、大変興味深かったです。

 

2-2. 3月:Cardiac Anesthesia

 MGHは世界初のエーテル麻酔が行われたことでも有名で、その場所は今もEther Domeとして保存されています。

 日々の実習は割り振られた手術室もしくは自分で選んだ手術室に行き、使用する薬剤や器具などの準備から始まり、術直前の患者さんの評価・説明、ライン確保、麻酔導入、マスク換気・気管挿管、中心静脈カテーテル挿入、術中管理、ICUへの搬送・申し送りに至るまでの一連の流れを見学しました。麻酔科のGrand Roundがある木曜日以外は1日に2件の手術があり、その後翌日の手術についてカルテを読んで勉強してから帰宅していました。また、薬剤の準備や投与、ライン確保やマスク換気・気管挿管など、手技も多くさせていただくことができました。特に、気管挿管は日本では学生が行うことはできませんが、麻酔以外でも病棟での急変や救急外来などでも役立つ、救命に直結する手技なので、大変貴重な経験となりました。こちらもレクチャーが充実しており、Cardiac Anesthesiaの研修医向けの経食道エコーのレクチャー、fellow (専門研修医)向けのレクチャーやエコーの症例検討会の他、麻酔科全体の研修医向けレクチャーやACLSの講習会にも参加させていただきました。また、心臓だけではなく、他の診療科の麻酔を見学する機会もいただきました。東大病院でまだ麻酔科を回っていなかったので最初は大変でしたが、その分、最終日にお褒めの言葉をいただいた時の喜びは大きかったです。

 また、麻酔科ローテーション中には、Cardiac Anesthesiaの市瀬先生、長沼先生、安田先生をはじめとする多くの日本人の先生方にお会いし、アメリカ臨床留学のお話や日本との比較など、様々なお話を伺うことができ、大変参考になりました。ありがとうございました。

 

3.       総括

今までは東大病院およびその関連病院でしか実習を行ったことがなく、そこで行われている医療を当たり前のように思っていましたが、今回のエレクティブクラークシップでMGHでの実習を経験し、日本とは大きく異なるアメリカの医療に触れることができ、視野が大きく広がったと思います。それとともに、日本もアメリカに引けをとらない良さを持っているということを再発見することができました。私も世界に誇れるような医療を提供できるような医師を目指して、今後の勉強に励んでいきたいと思います。ハードな2ヶ月間であり、準備も非常に大変でしたが、本当に行って良かったと思います。

 

最後になりますが、お世話になった東大およびボストンの先生方、国際交流室の先生方・事務の方々、教務係、奨学金関係者の方々に心より感謝申し上げます。皆様本当にありがとうございました。