感想文

タイトル ラオス・タイでの公衆衛生学実習

                               M3 Male

  公衆衛生学実習を行おうと思ったきっかけは、M3夏の公衆衛生学実習でベトナムやカンボジアを訪問したことだった。この時の実習は漠然と東南アジアで実習ができるならいってみようかなという気持ちで申し込んだが、いざ実習に行ってみると、具体的に何をしているのかがはっきりと見えてきて興味をひかれるようになった。

この実習は国際地域保健学教室の神馬先生のご協力の下で行わせていただいた。神馬先生はJICAと密接な関連をお持ちで、僕たちを各国のJICA事務所に紹介してくれて実習を行うことができた。実習の前準備としては、神馬先生にどこで実習したいのかや、どういったプロジェクトを見たいかなどを話して、それに応じて打ち合わせを行い訪問する場所を決める。ここからは、事務作業ばっかりになるが、神馬先生に紹介していただく方に自分からメールを送り、どの時期に訪問する予定だが、視察させていただけますかなどの許可を得て行く。僕が送る前に事前に神馬先生の方から連絡が言っているために、すぐに許可してくれるし、苦労はほとんどなかった。ただ、メールで数週間にわたっていろいろな人と予定の調整をしていくのは大変であった。ただ、これで前準備は終わりで、後は実習に行くだけである。

実際の実習形態は現地視察が大半である。現地視察といっても、まず国で一番大きな病院を視察した時に、たいていはその大きな病院にJICA事務所があるために、そこでどのようなプロジェクトが行われているかを聞く。どの国にも共通する考え方は、まず首都に国で一番大きな病院があり、その下に数個の群または県病院があり、その下に市の病院、ヘルスセンターと三角ピラミッドのような医療システムになっている。そのため、一番大きな病院を訪問した後には、地方の方へ足を延ばして、ヘルスセンターまで視察する。その時に、どこの病院までは帝王切開が行えるかや、どういった医療器具がそろっているかなどを病院のスタッフから話を聞く。そこから、どのレベル以下から医療が住民に行き届いていないかなどを考察する。ただ、僕自身が公衆衛生の観点で面白いと感じたのは、ベトナムとカンボジアとラオスの国同士を比較したときであった。まず、ベトナムの医療の特徴は都市と地域の医療格差が非常に大きいということだ。大都市の病院の医療レベルは東南アジアの中でもトップクラスのレベルである一方で、ベトナムの地理的な問題から山奥の方では多数の少数民族が集落を作って暮らしており、その人々は未だに伝統的な生活を送っているため、ほとんど医療を受けていないという。そのためにベトナムで重要な政策は、一つに地方のヘルスセンターの守備範囲を広げる、もしくはヘルスセンターの数を増やすこと。さらに一つには、地方と都市とのつながりを作ること。つまり、患者紹介システム(リファラルシステム)を作ることである。より高度な医療を要する患者を大都市へ送るとともに、軽症の患者を地方の病院へ逆紹介することで、より多くの国民が医療の恩恵を受けられるようになるだろうという考えである。この政策が成功すれば、都市の大病院に集中的に患者が集まる現状の改善が望まれる。これ対して、カンボジアは全くといっていいほど国の力が弱い。そのため医療を支えているのは、さまざまな国からのNGO団体である。NGO団体自体はカンボジアに対して善意でやっていても、国が弱いと上手く交通整備をして支援を国に入れることが出来ていない。つまり、NGO団体がやりたいことを勝手にやってしまうため、同じ医療器具だけがもたらされて使い方は誰からも教えてもらえないなど支援が被ることもあれば、カンボジア以外の国同士で目標が違うため、意見が合わないなどの問題が生じている。さらには、カンボジアの医師はカンボジアの公務員として働くより、NGO団体の作った病院で働いた方が給料はいいので、カンボジアの建てた国立病院はほぼ機能していない。故に、カンボジアに対する日本の支援は難しいと思われる。最後にラオスの医療だが、ラオスはまだ独特の宗教を信仰する国民が大半であり、科学よりも宗教優先の社会になっている。そのためそもそもとして病院は死ぬ場所という考えがあるため、医療は普及していない。さらには病院での母体死亡率と家で出産した時の母体死亡率が同じであり、医療レベルもまだ全然追いついていない。つまりこれから支援のし甲斐がある国である。カンボジアの様にあらゆる国の支援によって混乱が生じないように上手くやっていってほしいなと思う。

 公衆衛生実習で3カ国回って、このような考えをもつことができたし、途上国に対する支援の方法を学ぶことが出来た。自分がどういった道に進むか分からないが、少しでも公衆衛生で学んだ経験を活かせる道につけたらいいなと思っている。