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公衆衛生学実習「ラオス・タイ・ネパール」

 

Elective clerkshipの第II期に公衆衛生学実習のためラオス、タイ、ネパールへ同級生3人と行ってきました。公衆衛生学教室神馬教授がプログラムを組んでくださり、ラオス(1/292/8)、タイ(2/82/14)、ネパール(2/142/22)という日程でした。

実習はラオスのビエンチャンから始まりました。ラオスではJICAや青年海外協力隊の方々にお世話になりました。ラオスの病院体系は中央病院(5病院)→県病院(16病院)→群病院(131病院)→ヘルスセンター(835病院)4層構造となっています。今回の実習ではラオスのビエンチャンとパクセーで4種類全ての病院を視察させていただきました。ビエンチャンで視察したマホソット病院はラオス最大の中央病院であり、1000人ほどのスタッフがいる大病院です。このような大病院であっても家族が泊まり込んで患者さんの食事や身の回りの世話をしている姿は公衆衛生実習が始まったばかりの僕には衝撃的でした。県病院、群病院、ヘルスセンターと視察しましたが、日本との医療環境の違いに驚かされてばかりでした。

タイのバンコクでは東南アジア随一の高級私立病院であるバンコク病院と、バンコク市内にあるスラム街、そしてその地区の病院の視察が実習の柱でした。バンコク病院グループはBangkok Airwaysを親会社とする株式会社で、その中心であるバンコク病院は毎日平均2200人以上が訪れる私立病院です。海外の医療認定を出来るだけ獲得し、病院のブランド化を図っているとのことでした。Asian Hospital Management AwardDisease or Condition Specific Careといった認定を受け、他の病院との差別化を図っています。またバンコク病院は病院が勤務医にそれぞれの診察室を貸し与え、医師は医師自身の裁量で治療費を決定でき、固定給がない完全歩合制だそうです。日本の病院とは経営体系そのものが全く異なり、大きなカルチャーショックを受けたことは疑いようもありません。対照的に、スラムにある公立病院では4階建てであるにも関わらず常勤医は2(1人は病院長のため実質1人に近い)と圧倒的な医師不足に陥っています。バンコク中心街から車で10分程度の場所にスラム街があることも驚きでしたが、日本とは比べ物にならないほどの医療格差には驚きを隠せませんでした。

ネパールではカトマンズとナワルパラシで実習をさせていただきました。現地のNGOであるGreen Tara Nepalのスタッフの方々のご協力のもと、ネパールの草の根レベルのhealth promotionを視察させていただきました。例えばカトマンズでは町の中心からバスで1時間、タクシーで30分、さらに歩いて20分ほどの山の上の村(点々と家がある程度)に移動し、そこでのhealth meeting を視察しました。Meeting 会場は石造りの倉庫のような建物で、電気もなく、参加者は地面に茣蓙をひいて座っていました。大多数は女性で、中には女性が連れてきた子供や少人数の男性もいました。話の中心は、薬の飲み方や予防接種の啓蒙活動、子供の熱に対する対処の仕方といった話であり、参加者みんながしっかりと聞いている姿が印象的でした。またこのhealth meetingでは参加者によってお金を積み立てて貯金しているようで、単なる説明会以上の役割を果たしているとのことでした。

ネパールでの実習はこのようなmeetingの視察が中心となりましたが、途上国での草の根レベルのhealth promotionがどういったものなのか、少し理解できたような気がします。

                                                                                      

3か国での実習を通して色々なことを学びました。Common diseaseの違いや疾患アプローチの違いはもちろん、国毎に異なる医療体系や病院運営システム、日本とは比べ物にならないほどの医療格差、途上国の一般の人々の衛生知識の少なさや日本の医療器具の豊富さなど、具体的に挙げればきりがないほどです。知識として学んだものと実際に体験して感じたことは大きく違いました。途上国の医療の現状を少しではありますが、肌で感じることができた充実した実習でした。医者になってからでは中々体験できないことを学べますので、来年以降海外実習を考えている人には、臨床留学や研究留学だけでなく、海外実習の選択肢の候補に加えていただくことをお勧めします。

また、もし海外で公衆衛生実習を行う方がいたら、一つだけぜひ参考にしていただきたいアドバイスがあります。それは「出来るだけたくさんのお土産を持っていくこと!!」、これに尽きます。公衆衛生実習は様々な地域の公衆衛生を学ぶという性質上、移動が多くなります(もちろんプログラムにもよりますが)。すなわち、たくさんの方々にお世話になるということです(現地にいる日本人、現地人あわせて)。僕たちもお世話になる人の人数を計算してお土産を買っていったのですが、全く足らず、申し訳ない気持ちになることが多々ありました。急遽、病院長とお話しすることが可能になったり、訪問した事務所のスッタフが予想以上に多かったり、meetingに参加した村の方々がお昼をふるまってくださったり、と様々な事態が起こりえます。何を渡すかも重要ですが、お土産を渡すという行為も非常に重要だと思いますので、状況に合わせて臨機応変に対応できるように複数の種類のお土産をたくさん持っていくことを強くお勧めします(予想の3倍くらいでちょうどよいのじゃないのかと)。

 

簡潔ではありますが、今回の実習についてまとめさせていただきました。

神馬教授はじめ、今回の実習にあたり協力していただいた方々にこの場を借りて深く感謝いたします。