M3 Male

 

研究機関名

Helmholtz Zentrum München

研修期間

1/8~3/25

 

ミュンヘンで生活する上で、あらかじめ知っておくとよいかもしれないこと

・スーパー

スーパー(Aldi SudEDEKA) が隣駅(Alte Heide)にあるので、非常に便利だがどちらも20時にしまり日曜は営業していない。研究室をある程度早めにでないと食料調達に難渋することも。大半のお店(飲食系以外)は日曜日、閉まっている。

・食べ物・調理器具

醤油は中国からの輸入品でよければEDEKAで売っている。酢飯に使う酢もEDEKAで売っている。意外なことに生姜、ネギ、白菜もよく探すと売っている。因みに肉は基本脂肪少な目で薄切り肉は売っていない。寮の各部屋にキッチン(熱源は電気)があり調理器具は現地で売っているので、自炊は容易。コッヘルがあると皿にも調理器具にもなるので便利であった。

・電車

S-BahnU-Bahnの二種類の路線が走っており、ほぼ24時間営業している。自動で扉は開かず手動で開ける。駅構内には次の駅の名前が書いていないので、行先に要注意。

・寮費

自分の部屋は月263€で契約していた。また、デポジットという名目で300€あずける必要があり、部屋を出た約3ヵ月後に予め指定した口座に振り込まれるらしい。還元率は不明。

・支払

ATMは隣駅であるAlte HeideDeutsche Bankにある。特定のカードなら、ここでお金をおろせる。スーパーで支払時にカードを使おうとすると、「クレジットカードは使えないよ。ECElectronic cashというドイツのデビットカード)じゃないとだめだよ」と言われた。しかし、実際にはEDEKAVisaカードが使えた。店員が必ずしもVisaが使えることを把握していない様子。いずれにせよ現金があればまず困らない。

・物価

東京に比べれば安く、当時の為替でいうと、ジャガイモは2.5kg200円弱、Semmeln(丸いパン)7個で100円弱、牛乳1L100円弱といった具合。

・治安

日本並みか。特に変な人に絡まれることはなかった。警察、軍人はたまにしかみない(デモ会場、大きな駅、訓練場の近くとか)。2週間に1回以上、人に道を聞かれたのでおそらく彼らはあまり外人に抵抗感がない様子。

・バス

運行は比較的正確。渋滞などで遅れることも。自分が経験した遅れは最大で約20分だった。どうも、リアルタイムで運行状況を知らせてくれるアプリがあるらしい。

・言葉

大体の人は英語が分かり話せるが、英語が分からない人もままいる。当然ドイツ語ができるにこしたことはない。看板や商品の表記は全部ドイツ語なので全く分からないと困る。定型文ぐらいは覚えておかないときついであろう。

・ネット

寮の各部屋にネット(LAN)が引かれている。IP address等の設定が必要だが、丁寧な説明書を入居時にもらえるのでなんとかなる。因みに、コンセントから遠いところにLAN端子が設置されている部屋もあるので、有線で繋ぐならば長め(3,4mぐらい)のケーブルを持っていくと安心である。

・携帯

電気屋に行きパスポートを見せればプリペイドのSIMカードを契約できる。スマートフォンもたくさん売っていたが、日本語が最初から入っているのはソニー製のものしか見当たらなかった。学生寮に一番近い電気屋はたぶんEuro industrial parkにあるMedia Marketである。ここでO2という業者と通信契約できた。いわゆる通常の〜年しばりの契約をすると解約時面倒らしいので、使うならプリペイドを推奨する。

・洗濯

各々の学生寮に複数台設置されている。コイン式で、学生が運営している店でコインを調達できる。操作を間違えると無為にコインを飲み込まれるので要注意。

 

実習先について

Helmholtz Zentrum MünchenHMGU)はドイツヘルムホルツ協会の研究センターで、特に環境や健康に関する研究を行なっている研究所である。私はこの研究所のInstitute of Stem Cell ResearchISF)のMagdalena Götz教授の研究室に留学した。

この留学は東京大学とミュンヘン大学の交流協定に基づくが、Magdalena教授はミュンヘン大学の教授とHMGUの教授を兼任しているためHMGUで研究自習を行なうことになった。因みに両方の研究室のスタッフは合わせると40人近くになる。研究室のトピックは神経幹細胞で、中枢神経系での神経発生、神経系の傷害により引き起こされる反応などを主に扱っていた。実はMagdalena教授はRadial gliaが神経幹細胞であることを明らかにしてきた先生である。

 

実習先がきまるまでの経過

私はもともと神経系の研究室に2年間通っており、海外の論文などを目にするうちに海外の神経系の研究に興味を持ち始めた。しかし海外の研究室に伝手が全くなかった。そこで医学部の国際交流室の短期海外実習推薦者面接に申し込み、6月に推薦者面接や書類のやり取り、12月にDr. Sven Falk(担当教官)とのテレビ電話面談を経てなんとか1月からドイツに短期留学できることになった。このようにぎりぎりのタイミングで受け入れ先が決まることもあるので、受け入れがどうなったか頻繁に聞くなどして注意しておいた方がよいと思う。

因みに、面接の際には事前に送られてきた研究内容に関する論文を読んでおくように言われ、理解できているかどうか面接の際に確認された。こちらから内容について突っ込んだ質問をし、こいつ分かっているなと思わせることが面接に通る上で重要だろうと思う。あと、個人的な見解だが、面談の際はテレビ電話でないと相手の表情が読めず、身振り手振りが伝えられないため、会話する上で非常につらい思いをするであろう。だから、相手との面談が決まりそうになったら、ぜひぜひテレビ電話でやることを希望すべきだろう。

 

ミュンヘンでの生活

そうして17日にミュンヘン空港に着き、地下鉄を乗り継いでStudentenstadt(学生寮のある駅)に向かった。今回、ドイツでの研究実習にはB君と自分が行っていたのだが、実は1月は使える部屋が一つしかなかったため約1ヵ月間、同じ部屋を使っており、いつも寝袋で寝ていた。ありがたいことに一つの部屋に対して鍵は二つあったため、B君と自分とで鍵を一本ずつもってなんとか生活できていた。これはこれでなかなか楽しいものであったがB君には結構迷惑かけていたなぁと今でも思う。2月に使える部屋がもう一つ増えたので、2月以降は一人一部屋を使っていた。1月に部屋不足に陥っていたのは例年だいたい一人しかドイツに行かないので一人分の部屋しか夏の一斉予約の際に予約されていなかったためである。ミュンヘン大学の成富先生(日本語を教えていらっしゃる)曰く早めに何人行くか伝えてもらえば問題なく予約できるとのことである。(注意:受け入れOKが確定してから、学生寮の部屋が確保されるそうです。)

 

ミュンヘンでの生活で意外だったのはスーパーが20時に閉まるのもかかわらず電車やバスはほぼ一日中走っていたことである。日本にいたときはあまり時間を気にせずに帰り際に食べ物を買えたが、ミュンヘンではそういうわけにはいかず、何時に帰るかいつも気にして生活していた。また、意外なことにミュンヘンは自分が聞いていたよりもずっと暖かかった。自分はしばしば気温が氷点下になると聞いていたが、気温が氷点下になることはあまり多くなかった。研究室の人達によると例年はもっと寒く雪もよく降るらしく、暖冬である時に行けたのはとても幸運であった。

 

研究室での実習について

そろそろ、研究室について書こうと思う。1月に初めて研究室に行ったときに驚いたのは、スタッフの国籍が実に様々だったことである。実例を挙げると、イタリア、ドイツ、スペイン、スイス、スウェーデン、コロンビアなどなどと多種多様で、主に英語で意思疎通をしていた。当初は様々な英語なまりにとまどったが、しばらくすると慣れた。実はドイツ人は僅か数名しかいなかった。このようにスタッフの国籍が多様なのは決して一般的なことではなく、Magdalena教授が研究室を国際色豊かにしたいと考えているためであるらしい。もう一つ驚いたのはイベントが多いことであった。週に1度のラボミーティング(ミュンヘン大学の研究室と合同で)は当然だが、2週間に1回、ISFの合同プログレスレポート、週に1~2回、Magdalena教授の知己によるトークセミナーがあった。スタッフの研究や他の研究所の人達の研究の話が聞けるよい機会であったが、難解であった。

研究姿勢について日本と大きく違うと思ったのは個別主義的なところで、研究員は各々の研究のことをそこまで詳しく把握しているわけではなく、個人間の密なコミュニケーションがかかせなかった。特に実験のトラブルシューティングの際にそのことを実感した。

 

研究室では自分の机(占有)と実験ベンチ(Dr. Sven Falkと共有)を与えられ、研究所のパソコンも貸してもらっていた。1月初旬から中旬頃まではDr. Sven Falkのプロジェクトの手伝いとして、プラスミドの抽出、培養細胞を使ったプラスミドの発現チェックや抗体チェックなどをしていた。1月下旬に、あるプロジェクトのための資料をもらい免疫染色するが、うまくそまらずそのプロジェクトは残念ながら中止となった。

1月末になり、カスパーゼ(Caspase)が神経幹細胞(Radial glia)の分化や分裂にどのようにかかわっているのか調べることが決まり、帰国するまでこのプロジェクトについて実験をした。以下にそのプロジェクトについて記す。秘密にしなくてよいと許可はもらっているが、一応、守秘契約があるため詳細まで書かない。また、今回の研究実習では研究所の正規スタッフではなかったため、研究所のルールにより動物実験を行えなかった。それゆえ、以下で実際に生きた動物を扱う部分はDr. Sven Falkにしてもらっていた。

まず胎生期のマウスの脳室にCaspase inhibitorの希釈液を胎生期13日目で注入し、胎生期14日目か15日目に脳を取り出してPFAで固定した。脳は切片にして細胞分裂マーカーや、神経分化マーカーを免疫染色し、CortexLateral ganglionic eminenceLGE)を共焦点顕微鏡で撮影した。そして画像解析ソフトを使って定量しControlと比較した。定量の結果分かったことは、胎生期15日目に取り出したサンプルではどうやらLGEbasal側でM期の細胞が増えていること、胎生期14日目に取り出したサンプルではCaspase inhibitorを使ったサンプルで形態学的に神経細胞に分化した細胞が多かったことであった。他にもBrdUを使って胎生期14日目のS期の細胞について定量したが、有意な差は見られなかった。またDouble cortin陽性細胞について胎生期15日目のサンプルで調べたがVentricular zoneでの陽性細胞の数にも有意な差は見られなかった。Caspaseが神経幹細胞の発生・分化にどういった意義を持つかは分からないが、今後ISFで誰かが自分に続いて調べてくれるらしい。今でもDr. Svenからどのような感じかたまにメールをもらっている。

今回の実習で悔やまれることを挙げるとすると、研究所が郊外にあり、バスが21:00以降は運行していなかったため、夜遅くまで残って実験できなかったことと、HMGUでは正規スタッフでなかったため動物実験はできなかったことである。

 

最後に、今回の留学にあたり大変お世話になったMagdalena Götz教授と研究室の皆様、国際交流室の丸山先生やミュンヘン大学の辻先生と成富先生、援助してくれた自分の家族、そして最後に研究に当たり熱心に指導、アドバイスをしてくださったDr. Sven Falk教官に感謝の意を表してこの感想文を締めくくる。