Elective Clerkship第二期感想文

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私は今期Elective Clerkship第二期として、オーストラリアのシドニー大学の系列病院の1つであるRoyal North Shore Hospital4週間実習に向かいました。

 今回私が海外の病院での実習を希望した理由は、Elective Clerkshipの申し込みがあった当時、まだ自分が将来進みたい科を決めていなかったこともあり、Elective Clerkship期間中に自分の進路について考える機会を作りたかったことが大きいと思います。結果的に、海外実習中に見学した多くの出来事を通じて、漠然とながら自分の進路が見えてきましたので、本海外実習は功を奏したと言えるのではないでしょうか。

 具体的な実習の準備は前年の6月頃から始まります。Sydney大学のHPでは世界各地からの実習生を受け付けており、ここに自分で応募して手続きを始めます。

HPで実習科の受け入れ状況が表示されているので、まずはそれを参考に希望の科と実習期間を提出します。すると相手から受け入れ可能な科と実習期間が提示され、これで了解出来れば、既定の書類を幾つか提出し、入学金等の支払いを行うことで実習の受け入れ確定となります。HPでの受け入れは毎年6月頃から始まりますが、Major科は直ぐに埋まってしまうため早めの申し込みが必要不可欠だと思います。私の場合は特に強い希望はなかったのですが、内科系の科について幾つか提出したところ、Medical Oncology(腫瘍内科学)と呼ばれる内科に割り付けられました。

 その後11月締切の書類が幾つかあるので、それを提出し、それと前後して現地での滞在先・航空券の手配を行います。シドニーは総じて物価が高く、ホテルのシングルルームを借りると1$70~80はする上に、ホームステイの方がホテルに泊まるよりも部屋は圧倒的に広いので、確実にこちらの方がよい選択肢になります。ステイ先はシドニー大学のHPで紹介されている連絡先(メールアドレス)に順次相談してゆき、受け入れてくれる所を探す格好になります。私の場合はこれを始めたのが年の瀬迫る頃だったため、中々空いている部屋が見つからずヒヤヒヤしましたが、10件ぐらい当たった所で、無事に見つけることが出来ました。相場は食事なしでどこも1週間当たり$250ぐらいのようです。私のステイ先は病院からやや遠かったのですが、ホストファミリーはとても親切にもてなしてくれて、安心しました。後輩にも勧められるところだと思います。航空券は直行便のため若干割高になりますが、オーストラリア国内線と抱き合わせで販売される「スーパーカンガルー」が便利なカンタスか、JALを使うのがいいと思います。

 さて本題の実習について説明します。私の所属したMedical Oncologyは、日本語に訳すと「腫瘍内科学」になります。日本にも同様の名称の科は少なく、漠然と、腫瘍に関連する放射線治療や化学療法を専門に行う科なのだろうと考えていましたが、実際どのような治療を行っている科なのか、期待半面、不安反面で現地に向かうことになりました。

現地の病院で実際に実習を始めてみると、実際は他科で末期進行がんと診断され、積極的治療を行わないことに同意した患者さんや、ケア施設で化学療法や放射線療法を行っている患者さんが副作用に苦しんでいる場合に入院を受け入れ、応急処置を行った後に然るべき療養施設へと送り返すということを主な業務としていました。その他に外来業務として、放射線療法・化学療法を行っている患者さんに対する定期的なフォローアップも行われていました。

 実習は基本的に病棟の1チームに所属し、チームの回診・病棟業務を見学する形でした。所属するチームのメンバーがほぼ毎週入れ替わり、週ごとにチームの雰囲気に慣れるのが大変でしたが、今から思えば様々なDr.の回診のスタイルを見学することが出来て意義は大きかったと思います。

病棟業務ですが、先に述べたように専ら患者さんの急性期治療を行うため入替りは大きく、1週間で30床近くある病棟のほぼ全ての患者が入替ってしまい、それぞれの患者さんの病歴をフォローするのは大変でした。また、チーム回診は朝08:00からスタートするのですが、急性期患者が多く、毎日何らかのフォローアップが必要であることが多く、これだけでほぼ丸一日を費やすことになります。時には急患対応もあり、回診を中断して救急棟に駈けつけることもありました。

チームによっては自分で患者さんの病歴を問診して簡単なレポートを作成したり、回診の手伝いをさせてもらえたりしました。大学での病院実習ではチーム回診を1日最初から最後までフォローする機会もそう多くないので、これも大きな経験となりました。過去にシドニー大学に実習に向かった人たちの記録も参照し、比較的Dr.Working Styleは日本よりゆとりのあるものかと想像していましたが、この科ではそうではなかったです。また、木曜日には教授回診があり、朝1時間ほどのカンファを行った上で病棟を回診します。日本の教授回診と概ね相違はありませんが、患者さんや家族と病気や治療方針について話し合う時間が長いように感じました。

 このような形で4週間の実習はあっと言う間に終了してしまいました。実習を終えて感じたことは、他国の病院で実習経験を積むということは、外面的な医学的経験の他にもその国の文化的、社会的背景を深く知るきっかけになるのではないかということです。例えばシドニーは、戦後のオーストラリアの移民政策のために世界各国から移民を受け入れており、病院内でも市中でもヨーロッパ系の他にもアジア系、中東系など様々なBackgroundを持つ人々が行きかっており、非常に多国籍な文化であることを感じました。また、他国の臨床現場での医者と患者のやり取りを見学することは自分の将来の医師像を考える契機として重要な役割を果たしたのではないかと思います。

 余談ですが、今回私の実習期間中は同学年のメンバー4人が共通して実習に当たっており、日々の情報交換を行ったり、毎日の実習終了後に週末にあちこち出歩いたりしたことも良い思い出になりました。実際のところ私は英語があまり上手くなく、それによって必要以上のストレスを溜めこむ場面も多々あったのですが、そういう際に気軽に話を出来る相手がいたのは良かったと思います。