U期 配属先名 オーストラリア hornsby病院
M3 Male
出発までの準備に関しては基本的に1つ上の先輩の体験記を参考に準備をした。申し込みが遅かった関係で救急などの科はすでに埋まっていたが、それ以外の科は埋まってしまうことはなさそうな感じであった。手続き書類は申請してから何週間かかかるものもあるので早め早めにやってしまった方が良い。また、私は前後に日本の病院での実習を予定していたため、3週間での実習となったが、奨学金の対象が4週間以上なので4週以上の方が良いと思う。
まずなぜオーストラリアで実習することにしたかということであるが、海外で実習をしたいとは前から考えており、なおかつ英語圏で手頃に行くことが出来るということで選んだ。しかもオーストラリアは夏であり、綺麗な海もあり、いろいろあるわけで。
また、事前学習としては、英語の勉強としてTOEFLの学習の、主にリスニングを使って英語の勉強を少ししていた。5年間全く英語に触れていなかったこともあり、リハビリといった感じであった。また自分の行く科に関しては日本語で学習するついでに英単語もおさえていった。しかし、いざオーストラリアに行って思ったが、TOEFLのリスニングは聞くことが出来ても、実際のリスニングは全く違うものに感じてかなり苦労した。特にチームで一番年長の方が何言っているか理解するのに一番苦労した。少しイントネーションに癖があるだけでこうも苦労するのかと思った。しかもオーストラリア独特のなまりも重なり、聞き返すことが多かった。結局1ヶ月間ずっとそのことが一番の課題のままであった。
航空券は円安の影響をもろに受けかなり高騰していた。エアーズロックやタスマニアなどシドニー以外に行く予定がある場合はカンタス航空でまとめて取ると大分安く取ることが出来る。また、クレジットカードはAmerican Expressはあまり使うことが出来なかった。基本的にはVISAかMasterかであったと思う。現金としては15万ほどをAUSドルにして持っていった。そのうちホームステイ先に8万くらいかかった。カードをメインにして使ったので、現金はこれでちょうど良いくらいであった。
向こうの実習スタイルは日本と同じような感じで見学主体な感じであった。白衣は着ないで、襟付きシャツを来ていれば大丈夫といった感じであった。やりたいと言えば時々採血などはやらせてくれた。担当患者さんの割り振り等はなくdutyは無かったため、自分の中で担当患者さんを決めてお話を聞きにいったり問診をしたり、身体所見をとったりということをした。基本的に学生は自由であったのでぼーと過ごしていると何もないまま一日が終わってしまうので、一日のうちに何かしらするように心がけていた。カルテは検査値、画像は端末内で見ることが出来たが、それ以外は全て手書きであった。人によるが、何がかいてあるか全く分からないものもあった。実習は9時から3時くらいまでだったので、終わってからは観光したり、サーフィンしたりと自分の時間はたっぷりと取ることが出来た。オリオン座が日本と逆向きであったり、渦の巻き方が逆であったりで細かいことで南半球にいることを実感した。
毎週金曜日はRNSHで授業があった。現地の学生に向けたレクチャーで、それに混じる形であった。参加した回では、ITPなどに関しての病態のレクチャーでM2の系統講義と同様のものであった。また学生によるプレゼンの授業も毎週あり、担当者は各テーマに従って20分ほどで発表していた。
また、シドニー大学にはエレクラ担当者のような方がいて、その方が現地の学生を紹介してくださった。紹介してくれた学生二人は共に日本語をしゃべることが出来る人で、その内の一人ニックは日本人と結婚しており、日本での医師免許取得を目指して日本の国試に関して私たち以上に詳しかった。現地の学生がどのように生活しているかなどをその人から聞くことが出来た。暇な日に彼の家に遊びにいったり、ご飯を食べたりしてニックには大変お世話になった。オーストラリアの医学部は4年間で基本的には、教養過程もしくは他の専門分野を一般大学で4年学んだその後、医学部へ入学するひとがほとんどであるとのことであった。シドニー大学は特に、大学卒業者でないと医学部に入ることが出来ないとのことであった。また、オーストラリアでは、医学部の定員がどんどん増えており、少し前まで100人程度だったシドニー大学医学部も今では一学年300人程度いる。しかし、働ける人数はそれに対応して増えているわけではなく、働けない人が出る。それをAustralian Tsunamiと呼ぶのだと教えてくれた。日本ではとりあえずどこかしらで働くことが出来ると言うとうらやんでいた。
実習初日、7:50にreceptiondeskに着くが、間違ってregistrationdeskへ案内される。なんだか研修医向けの説明のような会に参加した。どう見ても周りは医者だし、どうもおかしいと思って休み時間に聞くと間違いとわかりフロントへ出直し。どうやら研修医と勘違いされ、話も聞かずに案内してしまったとのこと。いきなり英語の壁を感じるスタートとなった。
実習は2人の方の仕事を見学するような形であった。後に分かったことだが、先生の一人のjustinは同い年の23歳であった。しかし、知識は豊富ですごい丁寧に教えてくれた。担当患者一人一人について説明してくれた。先生二人ともアジア系の人だったため、英語は聞き取りやすく、また自分のつたない英語も彼ら二人はあまり聞き返すことはなかったので、ありがたかった。もう一人の先生は2,3個上の人で、採血の練習で腕を差し出してくれる優しい方であった。毎回昼ご飯は3人で研修医室のようなところで、食べた。昼ご飯は先生がおごってくれた。日本では盛り上がっていたであろうオリンピックは現地ではあまり盛り上がっておらず、会話のネタにもあまりならなかった。
患者さんと会話する際はこちらが聞くことを用意していっても、日本から来たというといつもなぜ来たのか?など質問攻めにあい、こちらが答えるといった感じになっていた。採血で失敗したことがあったが、向こうの患者さんは気にしないでいいよと優しく接してくれた。患者さんだけでなく、向こうの人は基本的に暖かい人が多かった。病院内の敷地で困っていれば、向こうからどうしたの?と声をかけてくれた。先輩の体験記にも同じようなことが書かれていたので、オーストラリアの国民性なのかもしれない。時に、朝10時頃にcoffee breakがありコーヒーを飲みつつ談笑もした。また、学生室のようなところもあり、そこで現地の学生何人かと仲良くなった。一人は元パイロットの人で、糖尿病のためにパイロットを断念して、医学部に入ったとのことでいろいろな話をしてくれた。毎週水曜の夜は留学生が集まるsocialnightが開かれた。そこでオーストリアやドイツの医学部の学生と仲良くなることが出来た。ヨーロッパからの学生は実習に来たというよりは観光がメインで来たといった感じの人もいて、毎日海に出かけているといった感じであった。
食事は基本的には自炊であった。ホームステイ先ではご飯が出ないため自分で作る必要があった。外食で済ませようと考えていたが、水を買うだけでも300円くらいかかり、サンドイッチで800円くらいと日本の2~4倍くらいかかるので毎日外食する気にはなれなかった。
週末は同じ時期に実習をした同期4人で毎週旅行をした。ブルーマウンテンやエアーズロックやタスマニアに行くことが出来、休日も充実した日々を送ることが出来た。
実習で見た患者さんの中でMunchausen syndromeと診断された方がいて、日本では見たことがなかったため、興味深かった。臨床的に病気と確信させるような真似を繰り返すという作話症であり、何度も入院歴があるひとであった。
実習を通じて、一番大きかったことは、英語圏で生活することがどういったものになるのかを知ることが出来たことではないかと思っています。やはり言語で壁になっているようでは仕事は出来ないし、同じ職場の人とも対等な信頼関係は築くことは出来ないでしょう。また、世界各国で同じ様に医学を学習している同年代に接し、何を考えているかを知ることが出来たことは今後のモチベーションに大変つながりました。
最後に、今回留学するに当たって、アドバイスをくれた先輩方や同期、家族、丸山先生を始め、お世話になった方々に心より感謝申し上げます。