平成26年度M3 Elective Clerkship

 

M3 Male

Elective Clerkship体験記

 

今回のM3海外Elective Clerkshipで私は、1月〜3月を通してシンガポールにあるシンガポール国立大学附属病院のNational University HospitalとカナダモントリオールにあるMcGill大学付属のSt. Mary’s Hospitalの二カ所において実習をしました。両者とも東大の国際交流室と提携のない大学でしたので、出願プロセスはすべて自分で行いました。この体験記が近い将来Elective Clerkshipで海外での臨床実習を志す方々に少しでもお役に立てれば幸いです。

 

National University of Singapore(シンガポール国立大学)】

 

I.   実習に行くまで

11930日(2週間)の期間を使って、シンガポール国立大学附属のNational University Hospitalで臨床実習を行いました。配属された科はDepartment of Hand and Reconstructive Microsurgeryで、東大でいうなら整形外科のsub-specialtyの一つに値する「手の外科」です。東大生がシンガポールへ臨床実習しに行くのは自分が初めてであるということもあって、最初はなかなか緊張しながらの実習でした。シンガポール国立大学への出願は、実習希望開始日から最低でも8ヵ月以上前に提出しなければならないため、準備は4月から始め、422日に書類をすべてそろえて出願しました。必要書類などはシンガポール大学医学部ホームページ上に(https://itumed.nus.edu.sg/scep/eligibility.aspx)書いてあります。向こうの大学の事務手続きはとても速く、59日には既にAcceptance Letterが送られてきました。シンガポールでの滞在は2週間程度だったので、ビザは特に必要ありません。それから、国際交流室の提携大学ではないため、学費が一週間あたりS$449.4045千円相当)かかります。また、出願の際に国際旅行保険の証明書を英語で求められるので、自分は東大生協に紹介してもらったAIUという会社の保険に入りました(後述するMcGillにおいても同じ保険会社の保険に入りました)。シンガポールは赤道に近く熱帯なので一年中30℃を超える真夏日ですので、1月の寒い日本から行くのはちょうどいいかもしれません。また、大学に留学生用の寮は設けていないので、自分の場合はLittle Indiaというインド街にある安いホテルに13泊しました。シンガポールは基本的すごく治安がいいのでどこに泊まっても安全ですが、Geylang地区だけは東京の歌舞伎町みたいなエリアになっているので避けた方が無難かもしれません。

 

II.  現地での活動

初日は朝オリエンテーションがあるので、医学部教務係があるTower Block 11階にあるYong Loo Lin Medical SchoolDean's Officeに集合。持ち物は白衣とパスポート、筆記用具など。自分以外にも消化器内科を回るシドニー大学や小児科に行くマレーシアの大学の学生もいました。オリエンテーション後、同じ11階にあるHand and Reconstructive Microsurgeryの医局へ誘導されて、そのままHand Surgeryの外来へと案内されました。外来では、attending doctorDr.Andre Cheahが面倒を見てくれました。実習自体は基本的にはHands-off observershipでした。外来見学においては日本にone-doctor one-student式ではなく、学生は6つある部屋を自由に行き来できて、先生がカルテを書いている時間などは待っているのではなく他の部屋へ移動するように言われました。ResidentFellowの先生がまず患者を部屋に呼んで初診を取った後、ConsultantDr.Andreが各部屋へ行き来して患者を診察や今後の方針などを決めたりするスタイルです。症例は、四肢外傷後の再建が最も多く、その他には手根管症候群、trigger finger、先天性の奇形などがありました。午前中の外来は13:00までかかり、そのあとほぼ毎日チームの先生方と昼ご飯を食べるというイベントがありました。先生方いわく、チームみんなで毎日ご飯を食べることはチームワークを築く上でとても重要であることだそうです。お昼ご飯は、去年新しくできた病院の横にある「Medical Centre」という医療モールみたいな所に連れて行ってもらいました。値段は$10以上のレストランと、$10以下のFood Courtがあり、実習の後疲れて町に出たくないときは帰りにここで夕飯も済ませるのも便利です。コンビニやベーカリーなどの売店もあって、朝ごはんなども買えるのでいろいろ便利でした。午後はオペがあるのでその見学になります。症れは主に外傷性骨折のリペアなどが多かったです。手術室へは研修医の先生が案内してくれてますが、学生は更衣室のロッカーが使えないので、荷物は基本ベンチの上に置きっぱにするよう言われます。貴重品はポケットに入れて入室していいとのことですが、自分はパスポートなど保健書などが心配だったのでカバンごとオペ室に持ち込みましたが時に何も言われませんでした。オペのある日はあまり貴重品をもっていかないことをお勧めします。実習は毎日16:00~17:00くらいには終わりましたが、実習後も時折先生に「コーヒーでも飲みにいかないかい?」と誘われ、18:00くらいまで先生と世間話をしたりと楽しい時間を過ごさせていただきました。また、週に3-4回くらい朝の勉強会および症例検討会があり、朝7:30に学生も参加をもとめられます。プレゼンテーションなどレポートなどのdutyはありませんでしたが、最後にDr.AndreによってevaluationされてCertificate of Completionをもらって実習終了となりました。

今回のNational University Hospitalでの実習で最も感じられたのは、シンガポールにおいてのDiversityの膨大さがすごかったこと。シンガポールはChinese, Indonesian, Malaysian, Burmese, Indian, Caucasianなどなどと本当に多文化の社会であって、その上患者の背景も、諸国から出稼ぎに来ているworkerもいれば、怪我をしたシンガポール軍の兵士までと様々であり、いろんなコンビネーションがありすぎて驚きました。こんなに多様性のある環境で患者に対応することとなると、もちろん医師一人や二人の力でどうにかなるものではありません。Hand Surgeryでは一つの外来で医師3-5人がチームを組んで、お互いを助け合っている姿が見られました。外来でミャンマー語しか話せない患者、英語ができない患者などが来た時にはすぐにチームの別の医師または、看護師やコメディカルの方々がサポートに入りコミュニケーションをとっていました。ある意味患者のdiversityに対応するため、医療従事者側もdiversityを持って接している図が見られました。これを通じて医療従事者同士の距離がとても近く、チーム意識も強いものであると感じました。自分も実習生でありながらチームの一員として迎えていただいて、外来で患者を診たり通訳をしたりしました。

もう一つ日本と違うと思ったのは、シンガポールでは医療体制がPublic (subsidized) Clinic Private Clinicに分かれていること。Public clinicでは、国民保健のcoverage下で診療が行われているため、日本の病院外来の様に毎日混んでいる状態です。先生方も外来をスムーズに行うため患者一人当たりに費やす時間を削りながら時間を調整していました。一方、Private Clinicとは、国民保健ではなくprivate保険で診療を行われている外来であって、患者が負担する医療費はpublic clinicのおよそ4倍で、いわいるVIP外来です。ここでは、外来室でコーヒーを飲みながらゆっくり話を聞いたりと患者も医師もかなりの余裕を見せていました。医師の方は週にpublicprivateのシフトが決まっていて、一人の医師が両方の外来を持っている体勢でした。とにかくシンガポールの外来は様々な人間間のinteractionが見れるので毎日とても充実していました。

また、NUH Hand Surgeryのさらにすごいところは、病院内に独自のMicrosurgery Training Laboratoryを持っていること。ここではresidentや外科の先生が実際の手術と同じ環境と道具で、しかもなんと専属のinstructor付きで動物などを用いたシュミュレーションができます。自分も2日間のmicrosurgery training courseに参加させていただけて、血管吻合を一から学ぶことができました。

こうして2週間はあっという間に過ぎてしまいましたが、先生方には最終日にお別れ会も開いていただいて良き仲間たちと出会えたとても充実した実習を過ごすことができました。

学生の内にこのような経験がつめて本当に良かったです。 このような機会を与えてくださったみなさまに感謝いたします。