2016 Elective              Clerkship 報告書

Harvard Medical School (HMS)

M3 Female         

 

201614日から131日までHarvard Medical School (HMS) Teaching Hospital1つであるMt. Auburn HospitalWalk-In Centerで実習させていただきました。コース名としては、Urgent Care Ambulatory Medicineですが実際に病院に行ってみると誰もこの名前を使っておらず、Walk-In Centerと呼んでいました。鉄門の人でMt. Auburn Hospitalで実習するのは私が初めてではないかと思います。

時間がないけれど私の報告書を読んでくださる方は是非【要約】を読んでください。もっと読んでくださるという方は長くて恐縮ですが【詳細版】を読んでください。

 

【要約】

海外でエレクティブクラークシップをしたいと思いたつのは早い方がいいと思います。HMSにはTOEFL100点以上が必要で早め早めの勉強が必要ですが、点数により受け入れ可能性がどれくらい変わるかは分からないのでほどほどにした方が良いかもしれません。HMSにはUSMLEは必要ありませんが、とれればとるにこしたことはないと思います。渡米までの準備は先生や学校からのメールに従い、たまに自分でもHMSのホームページを確認しながら指定事項をしっかり遵守してクリニカルクラークシップや他の活動とのスケジューリングを上手くしつつ一歩一歩準備すれば大丈夫です。医学に関しては、友人や家族、

先輩方、先生方と勉強するのもいいと思います。診療科にもよりますが私の場合はUSMLE STEP2CSの勉強がとても役に立ちました。授業料は高額ですが、かけがえのない体験が出来たような気がするので良かったと思います。お世話になった皆様に感謝申し上げます。

 

【詳細版】

1.渡米まで

私に関していえば学士編入しているというバックグラウンドもあり、海外でElective Clerkshipをしようと決めたのがとても遅く2015年の1月でした。ハワイ(妹がHarvardに行く前に実習していました)に遊びに行ったとき、海外で実習するのも案外いいなと直感的に思い、その直後に学士編入前の学科の卒論でお世話になった現医学部副学部長の先生が、高岡さん海外行ってみたらと勧めてくださったからです。それまでぼんやり、あ〜一ヶ月くらい行くかぁ、でもめんどくさそうだな〜、などと思っていたのですが、色々あり、ちょっと頑張ってみるかという気になったのが20151月下旬でした。ハワイ大学の募集があるかどうかがハッキリしなかったことと、子どものころからHarvardに憧れており2年前に旅行で訪れていいなぁと思ったこととUSMLEが必要ないことからHMSに応募することにしました。分からないことがあると妹に時々質問させてもらっていました。また一学年上の友人がとても親切にサポートしてくれ、同時にMcGillの応募も決めました。これは別紙で書きます。USMLEの勉強をするのが間に合わないことは明らかで、応募の必須要件ではないので、とりあえず20151月下旬からTOEFLの勉強を始めました。

 

1−1.TOEFL

HMSではTOEFL100点以上が応募の際必要です。両親が私が生まれる前NYに住んでいたこともあり英語はもともとTOEIC975点と実用英語技能検定1級をもっており、また塾や家庭教師などでも教えていたことから生活の糧でもあり日本人としては出来る方だと思っていたのですが、思っていたよりTOEFLが難しくて焦りました。結果的に膨大な時間と金銭をTOEFLに注ぎ込むこととなってしまいます。

20154月に初めてでいきなり101点がとれてそこでやめておけばよかったとも思うのですが、5月、6月、7月と受け続け、言い訳ですが実習などもありあまり勉強できず点数は上がらず、夏休みにかなり勉強して8月末に受けたものの当日失敗して悔しかったので、さらに秋休み後の9月に受けたところ今までで一番手ごたえが良く109点を取ることができました。勉強法としては1月下旬から実習がスタートするまでの2週間弱にOfficial guideをほぼ全部やりました。その後2月上旬から実習がスタートしたのですが、毎日少しずつ『旺文社TOEFL大戦略シリーズ』のWritingSpeakingを進めました。また単語力が足りなかったので『TOEFLテストフレーズで覚える英単語』という単語集の単語テストを毎週末妹か母にしてもらい、第3章くらいまでやりました。この時点で4月末の初めてのTOEFLを受け101点でした。これでも実習などなどとTOEFLの勉強を両立するのが思っていたよりも大変で、4月に回った呼吸器内科のオーベンの先生がいい先生だったので、外来などもっと見学できればよかったなと思います。この後は単語とWritingの勉強はコンスタントに続けましたが7月末に実習が終わり夏休みに入るまであまりTOEFLの勉強はできませんでした。夏休みには『TOEFLテストスコアアップ大作戦』という10日間集中の本をまずやりました。次にTOEFL Official testsというOfficial guideの姉妹版の本の模試を5回分やって、さらに『Delta's Key to the TOEFL iBT: Advanced Skill Practice』のリスニングを解いてshadowingを何度もやりました。この本のreadingもやりましたが簡単すぎるので良くないと思います。あとBarronの本なども少しやりました。ここにきてやはりPCでの受験になれた方が良いのではと思い、TOEFL practice online3回分買ってやりました。異常に高いですしリスニングのスクリプトもないのですが、本番慣れするという意味ではOfficial guideと並び優れていると思いました。単語集は最終的に4周しました。Writingは、Holmes先生と妹に添削してもらいました。

TOEFL 101点と109点で受け入れ可能性がどれくらい上がったかは分からないですし、時間とお金を使いすぎ結果的に医学英語の勉強を始めるのが遅くなってしまったと反省しているので、早め早めの準備をおすすめします。ただ、英語力は確実に上がったと思います。

 

1−2.学内選考

学内選考については全員に通知があるので、それをしっかり読んで期日などをしっかり守れば大丈夫です。2015520日に短期海外実習&奨学金応募用紙を国際交流室にメールで送りました。611日に学内選考の面接がありました。日本語と英語の面接でそれぞれ5分以内でした。簡単な志望動機などを聞かれました。翌日HMSに派遣していただける旨メールをいただきました。

 

1−3.応募から受け入れ最終決定まで

丸山先生が適宜メールをくださるので、それに沿ってしっかり一歩一歩早め早めに準備しました。個人的にはMcGill大学への応募を7月頭にしたので、immunizationなどはそちらで大体カバーしており楽でした。大変という方もいますが書いてあることをしっかり読んでしっかり守れば大丈夫だと思います。たまに自分でもHMSのサイトを見るとよりいいと思います。

本郷保健センターの方々にもお世話になりました。本郷保健センターのトラベルクリニックは予約が必要で真昼間しか空いていないので早め早めにコンタクトを取った方がいいです。私は運よく実習を3回くらい少し抜けただけでMcGillHarvardimmunizationの準備をすることができました。保健センターの先生方、スタッフさんが事情を考慮してくださりとても感謝しています。

9月頭にonline applicationをしました。101日夜に電話面接を受けました。質問内容については丸山先生に直後にメールしたのでまとめてくださっていると思いますが、医学的な内容については、「どんな実習してるの?どれくらい手技とかやってるの?」くらいしか触れられず、日常会話でした。「あなたの英語力は十分なので(うろ覚えです)受け入れるわ。楽しみにしています。」のようなことを言われ、「1月に実習するなら111日までに書類送ってね。」「バイバイ」と言われて終わりました。最初30秒くらい待たされたのも含めて5分でした。本郷界隈の自宅からiPhoneでかけ、音声に問題はありませんでした。事前に原稿を作ってかなり練習しました。朝ごはんを食べながら妹が練習してくれて、あと一学年上の友人が電話で3回くらい熱心に指導してくれました。感謝しています。

その後106日に飛行機を予約しました。成績証明書やdean’s letterなどをそろえて、しっかり確認してすぐにHMSに応募書類一式を郵送しました。1014日に届いたというメールがきました。

1017日から、妹と毎週末USMLE STEP2CSの勉強会を始めました。Case1~2個くらい選んで、かわるがわる医師役、患者役になりました。それに関連したMinicaseも勉強しました。初めは全然できなくて予習にとても時間がかかりましたが、もともと妹と仲がいいので和気藹々と楽しく勉強できました。この頃から去年McGillで実習された一学年上の女性の友人の勧めで『医学英単語 (メディエイゴbooks)〜リズムでしみこむ ゴカンでひらめく』を使い、妹に週に一回テストしてもらい始めました。10月下旬から同級生が『患者さんは「英語で・・・」と言ってます!』という本を使って英語で身体診察する勉強会を始めてくれて、とても実践的で役に立ちました。1025日にB1/B2ビザのネット申請と面接予約をしました。そうこうしているうちに、1123日に、受け入れ許可の正式なメールをいただきました。

 

1−4.受け入れ最終決定から渡米まで

翌日実習の休み時間に授業料 ($4625)を本郷のみずほ銀行に払いに行きました。

Mt. Auburn Hospitalで実習するのは鉄門の方では多分初めてで、とても不安だったのですが、妹の知人で東京医科歯科大の一学年上の女性が20155月にMt. Auburn Hospitalの同じ診療科で実習していたということを妹が思い出してくれ、紹介してくれて、その方がすぐに実習の様子などをとても詳しく親切に教えてくださり、本当に心強く有難かったです。

そこから住むところを探し始めました。妹が共通の知人から教えてもらったAt Home in BostonというサイトのMaryさんという方にapplicationをメールしたら、すぐ探すねというお返事をいただきました。しばらく返信がなかったのでその間にMt. Auburn Hospitalから遠いですがVanderbilt hall (HMSの寮でLongwood medical areaにある)にも応募したり、あと母がすごく心配して色々言ってくれたのですが、でも自分はMaryを信じようと思いました。しばらく返信がなくて住むところが全然決まらなくて、Urgent Care Ambulatory Medicineだったら全部の診療科の勉強をしていかなければいけないような気がして、全然準備できていないという焦りが強く、珍しくかなりストレスを感じて、同時に病院実習が後半外科続きでとてもエキサイティングで興味深く全力投球していたら風邪気味になって人生で初めて倒れました。しかもオペ中に。おそらく迷走神経反射を起こしたそうです。周りにいらっしゃった方々がとても親切にしてくださり患者さんの気持ちになって感謝しました。全く怒らず暫く傍についていてくださり飲み物を買ってきてくださった指導医の先生へのご恩は決して忘れません。深く深く反省しています。その後本郷保健センターの先生に親身になって治療していただきました。1130日にMaryから返信が来てMt. Auburn Hospitalから徒歩2分の女性大学教授のお家にホームステイさせていただけることになりました。この時は本当に安心しました。MaryにはPayPal$150払いました。

こうして処方された薬を飲み終わりそうになり気分も体調も上向いてきたころ、火曜にいつも通りお昼のHolmes Lunchに行ったら、東大に約半年間いらしているUC Davisの内科のProfessorに初めてお目にかかりました。1, 2月にHarvardMcGillで実習するんですが全然準備できていないのでとても不安ですと申し上げたら、じゃあ勉強会しましょう!みたいなことをおっしゃってくださり、その後、日本人の先生がコーディネーターになってくださり12月上旬から下旬にかけて全6回の海外でElective Clerkshipする人用の勉強会をしてくださいました。文化的なバックグラウンドの知識やアイスブレイクも含めながら、問診の仕方、カルテの書き方、プレゼンの仕方、略語の意味や読み方などを教えてくださいました。私たちのニーズを常に考えてくださり、フィードバックを歓迎してくださるとてもsmartdedicatedな先生です。ほぼ全ての宿題やスライドを事前に私に送ってくださり、アドバイスちょうだいとおっしゃってくださり、また何度かオフィスに伺ってケースを作らせていただいたりしました。この頃は実習の盛り上がりも最高潮で、オペに助手として手洗いして入らせていただき21時くらいにいったん抜けて先生のオフィスで相談させていただきその後オペに戻って23:15までまた手洗いさせていただいたらCrazyと言われましたがよい思い出です。また1211日の8:30から大雨の中ビザの面接を受けに行きました。「雪が降る時に行くんだね。」と言われて終わりました。ちょうどこの日は実習の指導教官の准教授の先生が午前中用事があってオペの入室が遅かったので運が良かったです。

12月下旬に冬休みに入ってからはほぼ毎日2ケースずつ妹とUSMLE STEP2CSの勉強会をしました。あとはお土産や防寒具を買い、荷造りをして、元旦の夜に日本を発ちました。羽田空港でホームステイ代$1000を含め$1800と、カナダドル500分をかえていきした。もっと割のいい方法もあるのかもしれません。

 

2.渡米してから

2−1.実習開始前

乗り継ぎのL.A.での入国審査では荷物検査のところに通されて少し不安でしたが、係員のおじさんが良い人で”Medicine is not for money. It is art to assist people. Money is gone once you die, but people whom you help will remember you. Remember this.” などとちょっといい話をしてくれました。この体験は丸山先生に伝えてあります。

節約するため2回も乗り換え24時間以上かけて現地時間の12日午前9時頃ボストンに着きました。以前旅行した時は直行便だったのでだいぶ大変さが違うなと感じました。タクシーでホームステイ先につきました。お土産を渡したら喜んでもらえました。Star Marketという近くのスーパーに連れて行ってくれました。その日は休暇なのでホストマザーと次男さん (26)の他にも長男さん (29)、長男さんの彼女さんがいて、一緒にContemporary Art Museumに連れて行ってくれてお昼を食べました。夕方実習初日の集合場所を確認し、手作りのディナーを家でご馳走になって早寝しました。翌日は長男さんと彼女さんを見送って、Harvard Squareに連れて行ってもらいCharlie Cardをゲットしたりしました。ホストマザーが用事があったので一人でHarvard Squareに残って夕方暗くなってから歩いて帰ろうとしたら道に迷って泣きそうになりました。道に迷っているときに白人さんから道を聞かれて、こっちが聞きたいよ、と思いました。

 

2−2.実習

ここからは時系列でなく実習について書きます。鉄門の人でMt. Auburn Hospitalで実習するのは私が初めてではないかと思います。Harvardの医学部以外のキャンパスがあるHarvard Squareから徒歩15分、71番か73番バスで3分くらいで、Cambridgeの高級そうな住宅街の中に、Mt. Auburn Streetという大通りに面してMt. Auburn Hospitalがどどーんとあります。周辺はEarly Americanっぽい豪邸がどこまでも立ち並び、緑が多くて閑静な感じでリスさんもいました。

さて14日(月)から実習が始まりました。その時期にWalk-In Centerで実習した学生は私一人だけでした。初日は名札を作ってもらってから9時にWalk-In CenterCoordinatorpreceptorに会いました。お土産に東大ゴーフルを渡したらとても喜んでいただけて、皆さんのお口に合ったようで、その日のうちになくなったそうです。13:30から電子カルテの使い方のような講義を他の学生と受けました。

Walk-In Centerは午前午後でシフト制で医師はそれぞれattendingの先生が1名ずつだけでした(ほぼ)。ナースさんは沢山いました。女性4人、男性1人のattendingにお世話になりました。1シフトだけ別の女性のattendingにつきました。教育的な先生方で勉強になりました。「何年生なの?」「ここでの実習の後はどうするの?」「日本に帰ったら何をするの?」「日本ではどんなことしているの?」は本当によく聞かれました。あと家族の写真を見せ合ったり、「両親や兄弟は何をしているの?」や「どこに住んでいるの?」など個人的なこともよく聞かれました。

スケジュールとしては、月、水、木、金は朝8時から17時か18時くらいまで実習でした(終わりは早い時は16時くらいで、遅い時は1930分くらいでした。主に私のスケジュールとモチベーション次第でした)。火曜日は14時スタートでした。火〜金は12~13時にNoon Conferenceがあり、ランチを出してくださり、食べながら授業のようなものを受けました。木曜日は8:15~9:30Grand Roundsがあり、Longwood medical areaから偉い先生が来てくださったこともありました。

実習初日と2日目はattendingの先生のshadowingをしたり指定されたUpToDateを読んで勉強したりしました。実習初日に、「システムになれてきたら私も一人で患者さん診てみたいのですがよろしいですか?」と聞いたら、coordinatorpreceptorが「もちろん!」とおっしゃったのですが、まぁしばらくはshadowingかしらと思っていたら、実習3日目かなり患者さんも多く忙しそうなのにいきなり同じ先生から”You can see this patient. It’s your first time, so I am going with you. Don’t take too much time, this is the problem of medical students. 5 minutes, OK?”みたいに言われ、先生が見ている中初見の患者さんの問診と診察をさせていただきました。確かURIみたいな症状の方がっただと思いますが緊張のあまり頭が真っ白になりました。先生からは、「良かったよ。でも私たちは普段Harvardの学生を見慣れてるから。彼らはもっと自分たちで患者さんを診る経験を積んでいて慣れている。外国から来た学生はあなたくらいのレベルだよ。最終学年なんだよね?」と言われ、「最終学年が始まったばかりです。」と言いつつ、それにしてももっとできたのにな、練習したことを本番でいきなり出すのは難しいな、と悔しく思いました。

それでも患者さんと多分ある程度良好なコミュニケーションはとれたのでしょう、また熱意と積極性を認められたのでしょうか、実習3日目のその出来事の後から、自分ひとりで先生も診たことのない患者さんの問診、身体診察をさせていただきアセスメント・プランも含めて報告して、先生からフィードバックをいただき、その後先生も一緒に患者さんの診察をしてくださり、電子カルテを書いたりUpToDateなどで勉強するという流れで、USMLE STEP2CSの応用版みたいな感じになりました。一日37人、平均4, 5人をそのような感じで一人で診させていただき、あとShadowingも沢山させていただきました。Cough, sore throat, chest pain, SOB, fever/chills, urinary symptoms, rash, headache, ear pain, fatigue, abdominal pain, diarrhea, low back pain, buttock pain, joint/limb pain, bite, irregular menses, nose bleeding, chemical exposure, chapped lipsなどのcommonな症状、URI, bronchitis, flu, pneumonia, reactive airway, asthma, cough-variant asthma, spontaneous pneumomediastinum, anemia, hand, foot & mouth disease, UTI, hypo/hyper thyroidism, cellulitis, folliculitis, impetigo, scabies, onychomycosis, psoriasis, sinusitis, otitis media, otitis externa, conjunctivitis, foreign body (tiny plasticsplinterなど), Baker’s cyst, fracture, muscle strain, sprain, sciatica, plantar fasciitis, greater trochanteric pain syndrome, meralgia paresthetica, bursitis, carpal tunnel syndrome, tendinitis, lateral epicondylitis (tennis elbow), stye, corneal abrasion, subungual hematoma, mastitis, superficial venous thrombosis, ingrown toenailなど主にcommonでそこまで重症でない疾患をお持ちの患者さんを浴びるように経験させていただき、とても勉強になりました。耳鏡などの使い方も教えてくださいました。

かなり沢山練習していったとはいえ、日本で母国語の日本語でさえやったことがないことを英語でするのは時々簡単ではありませんでしたが全然できないのかなと思っていたら初めから想像していたよりははるかにスムーズに出来てコミュニケーションにも支障はありませんでした。実習2日目、初対面のattendingの先生に”Why is your English so good?”と褒めていただけました。でもだんだん自分の中で基準が上がっていってもっと上手にできるようになりたいなと思うようになりました。

実習では積極的な姿勢を心がけました。もともと気が抜けているとき以外は(よく気が抜けていますが)割とそういう性格なので楽だったと思います。日本ではある診療科で「おまえやる気でベトベトだな!笑」と先生に言われてしまったのですが(笑)、アメリカではそれが普通だと感じます。直前の日本での実習がとても楽しくて先生と折り合いが良く積極的な姿勢を評価していただいたので、良いイメージを持って臨めました。113日の朝起きたらクリニカルクラークシップ優秀賞に選出していただけたとのメールをいただいていて、まさかいただけるとは思っていなかったのでとてもびっくりして嬉しかったです。少し自信を持つことが出来ました。

前出の医科歯科の方が最終日に症例プレゼンしたとおっしゃっていたので、私も自分からお願いして最終週に症例プレゼンをさせていただきました。とても褒めていただけて、impressed, outstanding, graphic queenなどと仰っててくださいました。事前にSkypeで前出のUC Davisの先生が指導してくださり、劇的によくなったと思います。1つや2つアドバイスをいただければ嬉しいなという気持ちでスライドを添付してメールしてみたら、Skypeしましょうとおっしゃり、スタッフさんが日時を設定してくださり、先生が凄く熱心にSkypeでボストンの夜21時から2230分くらいまで指導してくださいました。その後3時くらいまで直して、先生に添付して送って、ちょっと寝ようと思って寝て中途覚醒して何気なく鼻をかんだら鼻血が止まらなくなりました。その時はちょっと辛かったです。今思えばそれは同じ病院で実習して友達になった女の子の妹さんの手作りのブラウニーを食べすぎたのも関係あると思います。でも良い結果になってよかったです。初週に自分で診させていただいた患者さんで、疲労が主訴の有名女子大一年生の18歳女性でした。多分人生で初めて検査オーダーのようなことをお願いして実際にそれが診断につながった症例なのでとても思い出深いです。

予想できなかったことだったのですが、実習で一番つらかったのが実習が終わることでした。Mt. Auburn Hospitalでの実習が終わるのが悲しくて最終日前日の夜から人がいないところでわんわん泣いてしました。ホームシックに全くなっていなかったですし、あとMt. Auburn Hospitalでの実習が終わったらホッとして少し嬉しいのかなと考えていたので、終わるのがこんなに悲しく感じるのは予想外でした。実習が終了し、お礼を言い終わって病院を去ろうとしたら、ある女性が受付のデスクの人に”Where is the Walk-In Center?”と聞いているのを見かけて、ああこうやって今までもこれからも続いていくんだろうと思いました。帰り道も泣いてしまったのですが帰宅してホストファミリーと夕飯を食べたら元気になりました。深夜には泣き止みました。はじめは日本での知名度も高くないですしMt. Auburn Hospitalとかどこ?という感じで、同じ授業料払うなら私もLongwood medical areaMGHで実習したかったな、などとうっすら思っていたくらいなので、正直ここまで愛着をもつとは思いませんでした。

USMLEもまだ持っていないし英語がネイティブ並みといわけでもない私にここまで色々させてくれて教育してくれたMt. Auburn Hospitalの先生方に感謝してもしきれません。患者さんも本当にいい人ばかりでした。私のことをわざわざ先生に対して褒めてくれたりした患者さんもいて申し訳なくなったこともありました。あと多くの方が日本のことを褒めてくれて日本に対する評価が高くて嬉しかったです。

この後McGillERへ行くのが良いネタになっているようです。ボストンの人は皆 口をそろえてモントリオールは本当に素敵な都市だと、あと先生方はMcGillは本当によい大学で頭のいい人ばかりだと仰っていました。

 

2−3.主に実習以外のこと

ホームステイ先がMt. Auburn Hospitalから徒歩2分だったので通学に本当に便利でした。Vanderbilt hallからだと45分〜1時間かかってしまうので、個人的にはやはり冬にMt. Auburn Hospitalで実習する人はCambridgeの方で住むところを探した方がいいと思います。Harvard Squareにも近かったのでそこからLongwood medical areaや色々な場所に行きました。バスでWater Squareにも行きました。Charlie Cardは便利でした。しかし2回週末にRed lineの工事をしており、途中の駅から駅までシャトルバスに乗らねばならず時間がかかったり、金曜日の昼間にCentral stationLongwood medical area行のバスを待っていたらいつまでたっても来なくてタクシーに乗らなければいけなくなったこともありました。日本ほどしっかりしていないので待ち合せなどには余裕をもっていった方がいいと思います。あと民間タクシーアプリのUberを利用している知人・友人が多かったです。

ボストンは物価が高くて大変でしたがStar Marketでやりくりして買ったりNoon Conferenceで沢山食べたりして出費を抑えられた気がします。Star MarketWhole Foodsよりも少し安いしシャンプーなど雑貨も充実していて良いスーパーだと思いました。Whole Foodsは以前行ったことがありましたが、やはりおしゃれで好きでした。スーパーをうろうろするのが好きなので結構時間を使いました。

今年は暖冬で雪も殆ど降りませんでした。モントリオール用の恰好をしていったら暑いこともありました。年にもよりますし日によっても異なりますが、ボストンは日本+αくらいの防寒で大丈夫だと思います。

ホストファミリーは知的でいい人たちで、話のネタになるようなちょっと面白いことも色々ありましたが、ご飯を一緒に食べられたりして楽しかったです。ホストファミリーの親戚も一緒のこともありました。  

色々な方々にお世話になりました。鉄門関連だと、腎臓内科で東海大学にうつられた先生が腎臓内科でBrighamで研究しておられる先生を紹介してくださり、その先生が消化器内科で同じくBrighamで研究しておられる先生も一緒にご飯に連れて行ってくださったり、ボストン鉄門会の幹事をしていらっしゃる老年病科OBMGHassociate professorの先生を紹介してくださりラボ見学をさせていただいたり、最終週にロシア人でドイツでも研究している皮膚科医の先生と一緒にdinnerに連れて行ってくださったりしました。消化器の先生がボストン日本人研究者交流会なるものに連れて行ってくださったりもしました。老年病科を回っていた時にお世話になった私の憧れの鉄門卒後3年目の女性の先生がHarvard School of Public Healthにフルブライドで一年間留学しておられ、ランチをご一緒させていただいたりしてお世話になりました。また東大入学後初めてできた友達(女の子)がTufts大学のPhDコースにいて、その子が飲茶会やTuftsなど色々な場所に連れて行ってくれました。その子の知り合いで偶然Mt. Auburn Hospitalで実習していたMITPhDコースの方や、その方のお友達でボストンで声楽を学んでらっしゃる方といったお姉様方ともお知り合いになり親切にしていただきました。前出の副学部長の先生のご紹介でHarvard School of Public HealthProfessorofficeにも遊びに伺えました。あとは診療科は違いますがNoon Conferenceなどで一緒だった女の子と仲良くなって御宅に遊びに行ったり周辺を案内してくれたりしました。出発3日前にはホームステイ先でしゃぶしゃぶもどきを作ってホストファミリーと、前出のTuftsの友達と2, 3月にMGHで実習する同級生と食べました。本当はすきやきを作りたかったのですがすきやきのタレは売っていませんでした。千葉大医学科出身でボストンで研究していらっしゃる先生方とBoston Children’s Hospitalに研究留学しているM1の女の子と食事に行くことも出来ました。出発2日前には去年東大にいらしていたTufts医学部のProfessorが可愛いランチとMt. Auburn Cemeteryに連れて行ってくださいました。そこにチャペルのようなものがあって、反省などするところなのよ、と言われたので、USMLE STEP1をとってから来ればよかったかな、と反省しました。

他にも多くの方々にお世話になりました。本当にありがとうございます。

 

3.全体を通して

Mt. Auburn Hospitalでの実習を通して、こんなに浅学菲才で未熟な私でも、誠心誠意をこめて魂から体当たりで言えば分かってもらえるし伝わるんだなと感じました。でもいつまでも体当たりで魂使っているわけにもいかないし、それでは全然駄目なので、もっと洗練された実力を身につけないとなぁと強く感じました。あと今回はたまたま運が良かっただけでobserverでも文句は言えなかったので、国試やあと出来ればUSMLEもちゃんと頑張って何か確かな資格と実力を兼ね備えて、もっと役に立てるようになりたいなと思いました。

それでも去年1月末にTOEFLの勉強を始めて絶望的な気持ちになったり、2月に病院実習を始めたとき患者さんのベッドサイドで診察させていただくだけで汗びっしょりになっていた時は、一年弱後に英語で一日複数人の初見の患者さんを診させていただきアセスメント・プランも含めて報告したりカルテを書いたりしている自分は想像できませんでした。

今回HMSで実習してみて、少し離れたところから日本をみて、日本はこんなに小さい島国でありながらとても優れた美しい国であり、またある程度そのような評価を受けていると感じました。それは外国から知識や技術を学んだ賢い先人たちのお蔭が大きいと思います。また日本も外国の役に立っていて感謝されていると聞きました。これからもそのようなやりとりを続けていく必要があると思います。そして私は一生医学を専門にするのなら、その領域について日本語は勿論、英語でも遜色なく堂々と交流できるようになりたいです。

去年病院実習で初めての診療科(腎臓内科)を回り終わったとき寂しそうにしていたら、先生方に「すぐに慣れるよ。」と言われたのを覚えています。勿論慣れることは大切だと思います。しかし今回沢山の患者さんを診させていただき、当たり前ですが似ている症状でも本当に一人ひとり違うなと思いました。いつか医師になってこういう毎日が日常になるのでしょう。でもありふれた毎日が幸せそのもので、常に心をオープンにしてどんなに小さいことでもそこに日々感動を見出せるような感性を持ち続けたいな、そうすればどんなに年を重ねても人生はいつまでも色彩豊かなものになり続けるだろうな、と思います。私は今そういう生き方がしたいです。

最後になりましたが、実習の準備で何度もアドバイスをくださり導いてくださった丸山先生、English Lunch や英文添削でお世話になったHolmes先生、ご指導いただいた全ての先生方、お世話になった方々、英語面接や診察の練習をしてくれたりアドバイスをくれた知人・友人達、最初に英語を教えてくれアメリカの文化に触れさせてくれリベラルな教育をしてくれた母、ありとあらゆるサポートをしてくれた妹、鉄門倶楽部会計の決算監査・報告の時期に日本にいられない私の分も頑張ってくれて頻繁に連絡を取ってくれた同期・次期学生委員会計の皆にこの場をお借りして感謝を申し上げます。また、大坪修先生の鉄門フェローシップを賜りましたことを厚くお礼申し上げます。改めて自分が如何に多くの方々に支えていただいているか痛感しています。本当にありがとうございます。