M3 Male

I期 Harvard Medical School(アメリカ)

II期 Harvard Medical School(アメリカ)

III期 なし

 

I期は1/4-314週間、Beth Israel Deaconess Medical Center(BIDMC) WestNeurologyを回り、II期は2/1-284週間BIDMC EastSleep Disorders Medicineを実習しました。

 

【動機】

ECに応募したは、@将来のキャリアを決めるために海外の臨床現場を見ておく必要があり、臨床の知識も十分ついて将来の選択肢も広い今が最適だと思ったから、A将来基礎研究をアメリカでするための人脈を築くいい機会だったから、B語学留学をしたことのない自分の英語力がどれほどで何が足りていないのか身をもって実感したかったから、C親や学校に多大な援助を頂けるから、D(費用対効果はひとまずおいておいて)日本で実習するよりはるかに得られる経験が多い、などです。お金に余裕があって海外で活躍することを考えている人はこういう後付けの理由は考えないで応募するのをお薦めします。因みに基礎研究の留学を応募しなかったのは、一通り基礎研究について理解するのには一般的に3ヶ月以上の長期間が必要で、今回の実習期間では不十分だと思ったからです。これは本論ではないので興味があれば個人的に聞いてください。

【準備】

TOEFL

大学の授業で英語が使われていない東京大学の生徒はHMSに志望を出す際に100点以上が必須になります。100点を超えていれば後は電話面接での評価になるので問題ないです。20143月に最初に受けていたものが偶然100点を超えていたため、そのまま提出しました。ちなみにSpeaking19点とすこぶる悪かったので、さすがに印象が悪いだろうなと思い何度か再受験しましたが、特に変わらなかったです。英語は話せるに越したことはないのでちゃんとやっておきましょう

USMLE Step 1

臨床実習が始まった2月頃から始めました。最初はFirst Aid for the USMLE Step 1とその問題集を購入し、3月頃からUSMLE-Rxというオンライン問題集を3ヶ月分購入しました。1周した後に間違えた問題とチェックした問題を見直して終了しました。5月頃からU Worldというオンライン問題集を3ヶ月分購入して同様に終わらせました。Rxは基本的事項についてストレートに問う問題が多く導入として良いと思います。一方でWorldの方は細かい事象や引掛け問題が多く、解説は非常に丁寧なのですが最初にこれから始めると挫折するかもしれません。僕は途中から気づきましたが、Worldを解いていて知らなかったことやFirst Aidに書いていないことはその都度First Aidにメモした方がいいです。6月には全ての手続きを終わらせて9月初旬に試験を申込みました。10月にHarvard Medical School(HMS)に書類を提出する際に、Step 1の点数を載せたかったので9月に申込みました。手続きは色々な所で時間がかかるので、少なくとも試験予定日の半年前には取り掛かったほうがいいです。最終的な申し込みには10万円強のお金が必要なので、否が応でもモチベーションは跳ね上がります。Worldが終わった7月末頃にNBMEというUSMLEの模試を受けました。模試はNBMEKaplanの問題集の2種類がありますが、NBMEの方が実際の点数を反映するようなのでこちらを選択しました。目標点数に届かなったので8月は必死でFirst Aidの何周も読み直しました。8月末、3周後くらいにもう一回NBMEを受けたところ20点ほど上がり、目標点数である250点に近かったので後はFirst Aidを周回読みしました。実際の試験では問題集のものよりマクロでsystemicな問題が多かった印象でしたが、308問もあるので勉強したこともしてないこともほぼ全て出ます。僕は骨盤周りの神経支配を疎かにしていたのでそこを10問くらい聞かれて試験後に落ち込みました。試験の結果は約3週間後に返ってきます。

 HMSExchange Clerkshipに申し込むためにStep 1は全く必要ありません。2月にrotationした科のAttendingも言っていましたが、International studentは事務方が勝手に振り分けていて、受け入れる科の先生方は受入れが決まった後に書類を受け取るそうです。そして僕が思うに彼らは書類を全く読んでいません。なので、Step 1の点数で受入れの確率が上がるとは考えにくいです。ただ僕は、将来アメリカでresidentをする可能性があるならStep 1を受ける時期は今しかなく、Johns Hopkinsに志願するなら必須であること、また臨床知識を英語で身につけるための非常に有力なmaterialであることから受けることを決意しました。

国際交流室での面接:

日本語と英語の面接で各5分間ずつです。面接の先生は、日本語は栗原先生、孫先生、丸山先生、英語はDr. Green, Mr. Holmesでした。どちらも入念に答えを用意していたのでそれほど問題なく終了しました。日本語で話せないことは英語でも話せないので最低でも日本語の原稿を用意しておくのをお薦めします。HMSに申し込む方は面接はかなり審査が緩いのでそれほど気にしなくて良いと思います。ただ英語があまりに出来ないと落とされる可能性はあります。面接前にTOEFLを受けていたのは日本語面接ではプラス評価でしたが、英語面接では当然面接なので実際の会話が評価されると思います。

HMSの電話面接:

時差の関係で日本の夜の11時から面接が始まります。12時にかけると、もう休憩するから昼にかけてと言われてもう90分ほど待たされたので、出来るだけ早めに掛けることをお薦めします。質問内容はテンプレ通りで1問だけ新しい事が聞かれますが、十分アドリブで対処できるレベルです。僕は英語に自信がなかったのでかなり緊張していましたが大丈夫でした。HMSExchange Clerkshipの実質的なハードルはここだけです。

書類:

抗体検査とワクチン接種は年度始めから準備し、HMSへの提出書類を書き出したのは9月頃でした。CVPSなど普通の日本の大学生は書き慣れていないものもあるので、帰国子女や外国出身の知り合いや先生に繰り返し見てもらいました。将来様々な場面で活用できるので、審査と関係なさそうではありますがきちんと作っておいたほうがいいでしょう。VISAB1/B2を間違えて取得しましたが、本来B1だけでいいそうです。簡単な英語の面接がありましたが、受けている他の日本人はほとんど英語を話せていなかったので、東大生なら100%受かると思います。

その他:

同学年でECで海外の臨床実習を目指す友達とStep 2 CSの練習、case reportclinical reasoningjournal presentationなどをやっていました。個人の希望に合わせて内容も変えていったのですが、個人的にはStep 2 CSで患者に対応する具体的なフレーズを覚えたり、患者の内容をできるだけ簡潔に(3分以内を目安)まとめて発表するのが役に立ったかなと思います。最近は日本の病院でも海外の患者が増えているため、6年になって継続していければと思います。

【実習】

I期:

1/4-314週間、BIDMC WestNeurologyを回りました。去年の松橋さんと全く同じコースに行ったのでそちらも参考にしてください。Stroke, general, consult3つのチームに分かれていて、初日のガイダンスで僕は最初の2週間strokeチームに所属し、後の2週間はgeneralチームにいました。Generalチームはいわゆるstroke以外のepilepsy, MS, Parkinson’s disease, neuropathyなどの神経疾患を主に扱います。Epilepsyは日本では精神科です、と言うと非常に驚かれました。(epilepsyがないと日本のneurologyはつまんないねとEEGattendingに言われて反応に困りました。)ただチームの患者数の都合でstrokeが入ってくることもあります。同時期にHMSの学生4人も一緒に実習しました。

アメリカの学生実習は業務が非常に多く、日本の実習と違って合間に基礎研究などはほぼ不可能です。まず6時半くらいには病棟に行って患者のvitalsやオーダー、lab dataなどを記録し、患者を起こし(朝早すぎて基本的に不機嫌)、体調がどうかなど聞いて神経学的初見を取ります。朝回診は7時からchief resident, residents, medical studentで大体2時間くらいかけて回ります。新患の場合は5分程度で現病歴からA/Pまでを発表し、それ以外では30秒〜1分ほどでyesterday’s events, findings (lab data, imagingなど), vitals, neurological examination, A/Pを話します。重要な事をかいつまんで分かりやすく話すのが重要です。それが終わると9時半から勉強会が1時間あります。10時半からattendingを含めてteam meeting1時間程度行います。12時からはlunch seminarがあり、昼ご飯を食べながら勉強会に1時間参加します。13時半になると大抵attendingの学生向けの講義があります。身体所見の取り方や所見の解釈、読影やEEGの読み方など様々な基本的なneurologyを教わりました。正しいMMT(向こうの人は単にmotor testと言い、MMTは通じない)の取り方や眼振の鑑別など、普段の授業では教わらない非常に役に立つものばかりでした。15時〜15時半に終わると受持ち患者の問診・診察を行いカルテを記載します。最初に患者の問診とプレゼンの練習をしたいとchief residentに言っていたので、新入院の患者がいれば出来るだけ初診を取りに行きました。終わるのは大体18時頃でした。HMSの学生は大体17時前くらいには終わっていましたが、僕は不慣れだったので時間がかかりました。4日に1回は当直実習で平日は20時まで、休日は17時くらいまでresidentについていました。当直のない休祝日は休みでした。

学生の実習は院内患者のみで外来見学はありませんでした。患者は大体1週間以内には退院するので状況を把握するのが大変ですが、その分新患も多いので経験できた症例はかなり多かったです。僕はほぼ毎日1人の新患を取っていたので十数人経験したと思います。患者の症状からどこの病変を疑うか、どういう所見が鑑別に重要か、seizureの起源と考えるか、抗てんかん薬のどういう副作用をチェックするか、NICUなどにいる意識障害の患者でどんな神経学的初見を取るべきかなど本当に多くの事を学びました。毎回借りるのは申し訳なかったので、ハンマーは買っておくことを推奨します。最後の週では、それまでで病棟の患者管理は大体把握できたので、EMG外来で手技を教わったり、EEG室に行って脳波の読み方を教わったりしました。BIDMCではcontinuous video (cv)EEGが採用されていて、脳波を見ながらspikeartifactと思われる所で患者のvideoを見ることができます。カルテ記載も音声認識で自動入力できて地味にすごいなと思いました。

II期:

 2/1-284週間BIDMC EastSleep Disorders Medicineを実習しました。最初に言いますが、私が取ったこのコースはお薦めしません。まず月曜日が休みで、木曜日は外来に来ずに読書をするようにと言われます。よって実習は週3回の外来見学のみで、外来は多忙ということで学生が問診する時間はほぼありません。また、学生はinternational studentsのみでHMSの学生はおらず、向こうの友達を作るという意味では機会に恵まれなかったです。折角の機会だし、僕は休みの時間を使ってBostonの基礎研究室をいくつか覗いたり、将来について向こうの先生と相談したりしました。ただその話は今回の臨床研修とは無関係なので割愛します。

実習内容についてこちらでも説明します。外来は740分から始まり、午前のみで午後がカンファレンスの日と午後も外来の日があります。Sleep cliniccircadian clinicがあり、患者によりますがfellowattendingによる問診・診断が30-60分ほどあります。行動療法の要素が強いので外来は長めになっています。患者のほとんどはsleep apneaや睡眠障害で、CPAPの調節やsomnography、生活リズムについてのアドバイスなどがメインになります。外来の他にも週1回の睡眠についてのconference、月1sleep lab(患者の睡眠をsomnographyでモニターするので当直の形になる)、週1回の読書の日(睡眠について基礎的な事を知らない学生は本で一通り自分で勉強すべきだというattendingの考えのようです)などがあります。読書に関しては、わざわざ海外に行ってまでする必要性は感じませんでしたが、こういう時間が与えられて初めて読もうという気になるかもしれないとも思いました。Sleep apneaの鑑別やsomnographyEEGの読み方、circadian rhythmに興味がある方には面白いと思います。

【生活】

 家族旅行を兼ねたこともあって2015/12/30Bostonに着きました。寮は1/4からだったので、それまでThe Inn at Longwood MedicalというBIDMCと目と鼻の先のホテルに泊まっていました。実習前までは散歩したり、買い物したり、wifiのルーターを買ったり、向こうの携帯を買ったり、美味しいレストランを探したりしていました。値段相当の綺麗なホテルでしたがご飯は期待できません。Star MarketWhole Foodsで買い込むことをお薦めします。寮は意外と部屋は広いですが、収納、机・椅子とやたらと狭いベッドがあるだけで、ハンガー、マット、枕、カバーなどは全て自分で用意します。ベッドが狭くて布団がすぐ落ちてしまうのが最後まで嫌でした。キッチン、トイレ、シャワー、勉強部屋は全て男女20人ほどで共有します(トイレ・シャワーは男女別)ので、住む人以外はシェアハウスとあまり変わりはありません。向こうの学生いい人ばかりでほとんど医学生なので、話も合いますし信用できるのは良かったです。スポーツジムと体育館があるのはすごい良かったです。向こうの学生とバスケめっちゃやりました。WifiはありますがPC室はvisiting studentは使えません。TV室は全学生が共有する所があり、時々パーティーやスポーツ観戦をしていました。Laundryは全学生で10台ほどしかないのですごい混みます。しかも中々に埃が溜まっています。総合的に考えると、私は寮より外の方がいいんじゃないかと思います…

 

最後になりましたが、今回のECは自分の世界における立場がわかり、これからの方針や目標が明確になる非常に有意義なものでした。僕のこの経験をするにあたり、支援してくださった両親及び親戚の方々、書類だけでなく様々な面でもサポートしてくださった丸山先生を始めとする国際交流室の方々、アドバイス等を頂きました先生方や先輩方に感謝申し上げたいと思います。私も後輩の皆さんにアドバイスすることで恩返しになればと思いますので、質問等ありましたらいつでもご連絡ください。