M3 Male

 

T,U期 National Institutes of Health (NIH), Department of Laboratory Medicine, Hematology

 

@     はじめに

はじめに、今回NIHに紹介してもらえたのは、幸いにもたまたま学外にそのような伝手があったためだった。そのため、NIHでエレクラを行うことになるまでの過程はあまり参考にならない点も多いことと思う。簡潔にまとめると、当初海外での実習は考えていなかったが、たまたまある人からNIHDr. Braylanを紹介してもらえることになり、直接メールにてやり取りをして了承を得た。その後、窓口の職員から伝えられた必要な資料を用意し、丸山先生に大学の名前で正式にメールの形で送っていただいた。

NIHに行ってから知ったことではあるが、NIHにもClinical Elective Programがあり、それに応募して世界各国から来ている医学生も見られた。彼らと話していると応募に際する要求はそれなりに高いような印象だった。

 

A     NIHについて

NIHはメリーランド州ベセスダにある医学研究機関である。メリーランド州と言っても、アメリカの首都ワシントンD.C.まで電車で20分ほどの位置にある。シャトルバスが走る広いキャンパス内に2030の研究棟が点在し、リス、鹿、水鳥、ウサギなどが生息する比較的自然豊かな環境を備えている。きっと春や秋にはそれを最大限満喫できるのだろう。それぞれの研究室で、多種多様な分野の研究が行われているが、Buiding10/Clinical Center には患者さん(入院・外来両方)がおり、例外なく全員が何らかの臨床試験の対象となっていることは特徴としてあげられる。またその臨床試験もT相、U相など早期段階のものが多いとのことである。詳しい説明は公式ホームページやWikipediaに任せたい。

日本の研究者もそれなりに多く見かけた。NIH金曜会という日本人の組織があり、月に一度ほどの頻度で講義、親睦会が行われている。

 

B     実習について

今回の実習では血液病理系のオフィスを拠点としていた。そこでは毎日様々な骨髄標本・末梢血標本のスライドを顕微鏡にて観察し、その所見とフローサイトメトリーの結果をもとに診療科とのミーティングが行われていた。この施設で扱われる疾患は非常に珍しいものも多く、聞いたこともないような疾患も多く見かけた。その度に疾患概念を勉強することとなったが、貴重な経験になったと思う。

病理系統以外にも様々な方面に関わることができた。まず臨床の先生を紹介してもらい、週に2回はその先生のクリニックに参加させていただいた。更に、基礎系の研究室にも紹介してもらい、そこで実際に手を動かして実験に参加させてもらうこともできた。感染症に興味があると言えば、感染症科の先生を介して回診に参加させていただいた。

このように多岐にわたる経験をさせてもらえて非常に幸運であったと思う。自らやりたいことを伝えれば、それに合わせて柔軟に対応していただくことができた。そうは言っても短期の滞在、外部からの学生という立場であったため、制約がかかってしまうのも事実である。「広く浅くやらせてもらった」という印象。正式なClinical Elective Program学生はもう少し明確な立場を与えられ、患者さんに対する診療行為も可能なようだった。

それだけでなく、施設の各所で毎日様々な専門家が講演を行っている。講演を行うのはNIH内の研究者であることもあれば、NIH外から高名な研究者がやってくることも多い。完全に理解するのは難しいが、興味深い話が聞けることも多い。講義に用いられるホールでは定期的に音楽のコンサートも開かれている。

 

C     実習以外のことについて

NIHには寮がなく、かといってホテルはあまりに高いのでAirbnbにて宿を探した。(短期滞在で部屋を借りるのは厳しい模様。)ベセスダに滞在したが、近隣の物価は少し高いような印象を受けた。前述の通りワシントンD.C.までのアクセスは良好で、週末の観光はD.C.を中心に行った。ここに来るまで知らなかったのだが、スミソニアン博物館とは一つの博物館ではなく、複数の博物館・美術館群であった。スミソニアン系の動物園まである。いずれも大きく、しかも無料であり、美術館・博物館が好きな人は楽しめると思う。更にスミソニアン博物館の一つNational Gallery of Artでは無料のコンサートや、映画上映会も定期的に行われており、何度も足を運んだ。この一帯はナショナル・モールと呼ばれ、区画も綺麗に整理されており、散策するだけでも気分が良い。またD.C.には4大スポーツのチームが揃っており、スポーツ観戦も楽しめる。いずれのスポーツもシーズンが決まっているので、短期滞在で全てを満喫することは残念ながら無理である。食については、ベセスダもD.C.もレストランが豊富であり、これもお金を出せる範囲で楽しめる。

気候についてだが、氷点下は日常的で東京よりも若干寒い冬、という印象であった。マイナス10℃を下回ることもあり、雪も珍しくなかった。また今回は記録的な大雪に見舞われ、珍しい体験を楽しむことができた。3日ほど休みになったが、ブーツを持参していたことが功を奏し、その分は観光に充てられた。2月下旬、3月上旬になると10℃を超えるような暖かい日もちらほら出てきて、季節が春に変わってゆく様子を感じられた。こちらでは花粉症に悩まされないと高をくくっていたが、暖かくなりだしてから目が痒く、そして鼻がムズムズするようになった。

治安面についての感想を述べる。ベセスダ自体は高級なエリアであるらしく、近隣の治安は良好であるように感じた。しかし一時より改善したものの、D.C.は比較的治安の悪い街として知られているらしい。実際、Anacostiaなど非常に治安の悪いエリアもいくつも存在するようで、そういった場所に踏み込まないように注意が必要である。渡米前の下調べと、現地で人に訊いてみることが大切だと思う。とはいえ観光名所であるナショナル・モールではスリや置き引きに気をつければ、大きなトラブルには巻き込まれにくいように思える。

 

D     最後に

今回のエレクラではたくさんの人にお世話になったが、そのお礼は直接本人にしてきたので、ここでは割愛する。

実習中、様々なバックグラウンドを持つ人々と話す中で、いろいろなことを考えさせられた。特に他の国の同世代の人々との会話は、自分や日本のことを見つめ直すきっかけになり、良い経験になったと思う。